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【小説】スポットライト(仮) ※執筆中

第3章|夢のマイホーム

あれから1年半を仮設住宅で過ごした星夜たちは、35年ローンで父が購入したマイホームへ転居した。間取りは3LDK、占有面積は60㎡。ファミリータイプのマンションの一室だった。神ベの街からは少し離れた田舎町ではあったが、相当な額のローンを組んだことは間違いないだろう。

それに星夜は転居してから8ヶ月後、2年生の私立保育園に通うことになる。そこそこ教育に力を入れた園だったようで、英会話の授業も存在した。客観的に見ても、この頃は裕福な家庭だった。

※幼少期の星夜

ただ一つ残念なことがある。大金をかけてもらった割には… というか、星夜には保育園時代の記憶がほとんどないのである。

残っている記憶と言えば、園の送迎バスの中で「おうぢにがえじでぇゔっ」と毎日泣き叫んでいたことと、ジャイアン/スネオ/のび太みたいな生意気な男子3人の顔と、色黒で小柄な先生の顔と、別の先生の名前(ヤギ先生)と保育園の外観という極めて限定的な情報のみ、という。

可能性としては当然、星夜の基礎能力や人格形成に多少は役立ったのかもしれない。しかし、園に頼り切った幼児教育は考えものだと思わざるを得ない。というのも、毎日の送迎バスで泣きじゃくるほど星夜は保育園が嫌いだった。星夜の記憶にはまったく残ってはいないが、おそらく授業や行事ごとにも前向きではなかっただろう。

その裏付けになるかは分からないが、小・中学生の星夜は、授業や行事ごとに人並み以上に後ろ向きだった。遅刻や欠席こそなかったものの、夏休みの宿題は半分も提出しなければ、テストの成績は183人中145番前後、合唱コンクールは口パク、マラソン大会はドベに近かった。

もしこの後ろ向きさが、保育園で形成されたものであったなら、園にどれだけ優秀なプログラムが存在していたとしても、一切の知識やスキルが習得されていないのも納得である。

一方で、当時小学3年生だった星夜が、初めて自発的にやりたいと言い始めた柔道に関しては、2年で辞めることにはなるものの、常に前向きな姿勢で練習に取り組んでいた。それに、高校の体育科目で柔道があった際には、当時の練習の成果をしっかり発揮出来ていた。

つまりは「どこで学ぶか」と同等、もしくはそれ以上に「なぜそこで学び始めたのか」を本人が心底納得していることが大切なのである。

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